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Information  「親父の美容院奮闘記」

マニアックなアングラ小説です,不快感がある方は、 読むのを中断して下さい(^_^;)  
親父のくせに、美容院に行って来ました。・・・
我に背くは、根無し草… 流れに背くは、風来坊… 兎角この世は住みにくい…

親父のくせに、美容院に行って来ました。
私はどーいうワケか数年前から,髪を伸ばし始めまして、
それからというもの寝る時と風呂に入る時以外は
いつも髪を後に束ねているワケでございますが、
そんな事から、床屋ではなく,美容院に行くようになりました
床屋ですと洗髪が困るのです)。いつもの美容師さんが
交通事故で入院してしまった為、仕方なく22才の同居女が勧める
美容院に行ってみたのですが、しかしこれがまたなにやら凄い美容院でして
その美容院はカリスマ美容師などと呼ばれるバカタレがウヨウヨしている,
美容院なわけでして、
もうとにかく何から何まで,カッコウ付けているのでございます。

しかし、アレですね、「オシャレな美容院へ行く親父」ってのは、
「田舎者のパリ旅行」に通じるものがございまして、
なにやら「身の程知らず」と書かれた,大きな看板を
背中に背負っているような、そんな感じがして堪りません。
とにかくこの美容院は、客も店員もひたすら年齢層が低く、
真っ白な店内には、華やかで,ファッショナブルな若者達が
ファッション雑誌なんかをパラパラさせながら、
優雅にエレガントにカッコ良く,スラリと長い足を組んでおりまして、
そんなハイカラな店に、全身黒ずくめのサングラス親父が、
演歌歌手のように眉間にシワを寄せながら,ノソリと現れたわけですから、
それはまるで、超有名デザイナーのトーキョー・コレクションの
打ち上げパーティーの会場に、間違えて迷い込んだ
泥だらけのマッドマックスといった,感じなのでございます。

待合いコーナーに座っていたギャル達が、一瞬、「ナニアレ」ってな感じで
私を睨みます。腰にガンベルトみたいなモノを
ジャラジャラと付けた店員達も、「なんだアイツ」ってな感じで
チラチラと見ております。素晴らしく「場違い」なのでございます。
入口カウンターでモジモジと立ちすくむ私は、ここを紹介した22才の
同居女を今夜こそはバルコニーで一晩過ごさせてやる、
どれだけ泣こうが喚こうが,絶対に部屋には入れてやるもんか、と、
1人ワナワナと怒りに震えておりますと、
いきなりチワワのような女店員がやって来まして、
「こちらでお待ち下さい」と、ナニアレ光線のギャル達がいる
待合いコーナーに私を案内したのでした。

ギャル達に囲まれながら私は、なぜかヒッチコックの
「鳥」の恐怖を覚えました。
そこは、咳払いだって許されない雰囲気でございまして、
屁なんてやらかしたらきっと,ギャル達に袋叩きにされる事でしょう。
そんなギャル達に脅えながらも、ソファーの隅で小さくなっている
大っきな黒親父。そこに再びチワワのような
女店員がやって来まして、いきなり私に
「御指名ございますか?」と聞きました。
いきなりそんな事を聞かれても・・・と、とたんに脅えた私は、
早く返事を出さないと,叱られるのではないかという恐怖に陥り、
どの娘にしよう!と、慌ててフロアをキョロキョロします。

するとチワワはそんな私を見て「ぷっ」と小さく噴き出し、
「初めてですよね?」と、私のそのキャバクラ的行動を戒めました。
「そうです!」と、妙に大きな声で,軍隊調な返事をしますと、
私の前のソフアーに座っている、
ヤキを入れられた田中邦衛のような顔した,ギャルが私の顔をジロッと睨み、
再び私は「ひっ!」と小さくなってしまったのでございました。
チワワは何やら書類の付いたボードを持って私のソファーの横に
スっとしゃがみました。そして、おっかないギャル達が大勢いる前で、
チワワはエンピツ片手に「今日はどうなさいますか?」
などと高度な質問をしてきます。

いつもなら「今日はアナルと即尺で」などと、
バカ親父的なジョークをカマシてやるとこですが、
しかし、今ここでそんなジョークを言ったら、
きっと大変な事になります。私はモジモジしながら、
蚊の飛ぶような小さな声で「普通に短くカットして下さい・・・」
と答えました。しかしそう答えてしまってから
一気に汗が噴き出しました。そう、
「普通に短くカットして下さい・・・」とは、
日本語になっていないのであります。

しかし、チワワは,そんな意味不明な私の要求に対し、
「普通・・・短く・・・カット・・・」と、
呟きながら、怪しい書類に,セッセと書き込んでいるのでした。
しばらくすると、ギャル達が威嚇して来る
待合いコーナーからやっと解放された私は、
洗髪コーナーへと連行されました。
しかし、その洗髪コーナーにも,ギャル達はウヨウヨとおりまして、
そこもやはり独特な,雰囲気に包まれております。
私は彼女達の怒りに触れぬよう、できるだけ目立たないようにと
大きな体を低くさせ、まるで落語家の登場のように
ソソクさと洗髪シートに腰を下ろしました。

そんな私の元に、「失礼しまぁーす」と言いながら、
若い頃の浅田美代子のような,娘さんがやってきました。
美代ちゃんは私の顔を見るなり、意味ありげに「クスッ」と笑いました。
美代ちゃんのその「クスっ」に私はどれだけ救われた事でしょうか。
今まで、散々ギャル達から「いわれなき差別」を受けて来た
この脅えた親父に、なんと美代ちゃんは
その真夏の青空に向かって,元気に咲いてるヒマワリのような、
とっても明るい微笑みを,投げ掛けてくれたのでございます!

とたんに嬉しくなった私は、そんな美代ちゃんに
「えへっ」と悪戯坊主のような微笑みを返しながらも(バカ)、
たとえ今ここで大地震が来たとしても
心配するな美代ちゃん、この糞ギャル達の屍を踏み越え、
キミだけは絶対に俺が守ってやる、などと、
密かに大地震が来る事を祈りながらもそう心で呟いたのでございました。

美代ちゃんは私の膝に、アイボリーの膝掛け毛布を
スッと掛けてくれました。
どーしてこの美容院というヤツは、洗髪の時になると必ず
膝掛け毛布を掛けるのでしょか。
全然寒くもないのに、なぜかやたらに,膝掛け毛布を掛けたがるのです。
私が思うに、恐らく、洗髪時に女性が横になったりすると、
スカートの中が見えてしまうという,恐れがある事から、
きっとこの膝掛け毛布は,その対策なのではないかと思うのです。
しかし、そーだとすると、男の私にまで膝掛け毛布を掛けるというのは
変ではないか・・・。そんな事をアレコレと考えていると、
洗髪シートがグググッと,リクライニングいたしました。

寝っ転がっていく私の真正面に、美代ちゃんの素朴な笑顔が現れ、
とたんに恥ずかしくなった私は、
ポッと顔を赤らめながら慌てて目を反らします。
そんな私のウブな気持ちを知ってか知らずか、
美代ちゃんは、「失礼しまぁーす」と言いながら、
天井を向く私の顔に,白い油紙のような紙をペロンと乗せました。
これで完全に私の視界は遮断されました。
まさに「目隠しプレイ」の如く、白紙を顔に乗せられた私の目前は、
ひたすらホワイト・アウトでございます。
すると美代ちゃんは、私の髪を縛っていたゴムをスポッと外すと、
その細い指で私の髪を梳かし始めました。

そこで再びギョッとしました。そうです、いきなり
「フケ」が気になったのです。そして同時に「頭皮の脂」も
心配になってきました。
私は毎日髪を洗っていますが、時々、22才の糞バカ同居女が
私の頭を覗き込みながら「わあーっ!凄いフケだぁー!」
などと叫んだりして、私に生きている事の苦痛を感じさせたりするのです。
ですから私は、きっと今頃美代ちゃんも「わあーっ、でっけぇフケだぁー」
などと思っているのではないかと、もう恥ずかしくて死にたくなって来ました。
しかし、そんな私の気持ちも知らず、
美代ちゃんはまだその細い指で,手櫛を続けております。
(美代ちゃん!もういいから,早く湯をぶっかけておくれ!
これ以上、僕に恥をかかせないでくれ!)そう心で何度も叫びながら、
私は白紙の下で唇を噛んでいたのでした。

そんな羞恥プレイにより,存分に辱められた私の頭に、
やっとシャワーの湯が掛けられ始めました。 
親父臭漂う頭皮に、ジンワリと温かい湯が浸透して来ますと、
すかさず「熱くないですか?」と美代ちゃんが聞いて来ます。
まるでファッションヘルスで,○◎ににシャワーを
ぶっかけられている時と同じでございます。
シャンプーを泡立て、私の頭をガシュガシュと洗う
美代ちゃんの腕の生肌が、時折、私の頬に触れたりします。
私の髪をガシュガシュと激しく洗うその音が、
まるでマット洗いで○◎をシコシコされている時の音に聞こえて来ます。
あぁ美代ちゃん、おじさんはもう我慢できませんよ、と、
洗髪シートの上で1人悶えておりますと、

今度は美代ちゃん、私の頭をグイッと持ち上げ、
私のウナジを泡の付いた,ヌルヌルの手でマッサージするではありませんか。
ヤバい!ヤバいぞ!このまま行くと、お○◎様がお目覚めになるぞ!
そこで私は「はっ」と気付きました。そう、この膝掛け毛布が
女性だけでなく男性にも必要だということが
・・・(たぶん私だけだと思いますが)。

そんな幸せな時間もあっという間に過ぎ、
グィーン・・・と洗髪シートを起こされて,現実に引き戻された私は、
再びギャル達にジロジロと横目で睨まれて、
またまた肩身が狭くなります。そんな時に限って、
シートを起こした美代ちゃんが「おつかれさまでしたー」などと叫び、
それに答えるかのように,フロアにいたカリスマだか
カリクビだかわかんない店員たちも、
一斉に「おつかれさまでしたー」と声を揃えて叫びます。

おもわず私も、居酒屋の兄ちゃん口調で「よろこんでー!」と
答えてやろうかと思いましたが、
しかし、ここはそんな,ジョークの通用するような
場所ではございません。
そんな私は、大勢のギャル達にジロジロと睨まれながら
フロアに連行されました。すると、鏡の前で、
実に幸の薄そうな女の美容師が,私を待ち構えているではありませんか。
瞬時に私は安心しました。その、やたらと貧乏臭く、
この雰囲気に全く溶け込めていない
その美容師(推定34才・独身女性)は、私と同じ匂いが
プンプン漂っているのでございます。

いいじゃん、いいじゃん、新宿の花園町っぽくてなかなかいいじゃん。
とたんに気が楽になった私は、その幸の薄そうな女に「お願いしますよ」
などと粋に微笑みながら、鏡の前の椅子に座りました。
女は、チワワから受け取ったボードを,チラッと見ると、
無言でハサミを手にしました。
ちょっと焦りました。というのは、以前にもこんな事がありまして、
気の小さな私は美容師さんに,何も言えないばかりに、
勝手にバサバサと髪を切られ、
もの凄いオカッパ頭にされた事があるのです。
短すぎてポニーテールに縛る事も出来ず、
それはまるで「異様に老けた座敷わらし」のようでございまして、
マンションの住人から,酷く気味悪がられては大変だったのです。

だから私は「あのぅ・・・」と、その貧乏神のような女に声を掛けました。
女は返事もせず、今まさに髪を切る寸前のポーズのまま、
鏡越しにジロッと目を向けました。
「あの、あまり短く切らないように・・・
あの、後で縛れるように、ここを長くしてください・・・」
私は毛先をツマミながらそうお願い致しますと、
貧乏臭い女は一瞬「ふっ」と鼻で笑った後、
「わかりました。でも、長くする事は無理ですけどね・・・」と
呟いたのでした。

あえて私は笑ってやりませんでした。
これがもしチワワや美代ちゃんだったなら、
これでもかってなくらい卑屈になって
「うふふふ」っと笑ってやるのですが、
しかし相手は私と同じ獣の匂いのする,ポン引き野郎です。
彼女と私は同じ土俵なのでございます。
江戸の仇は長崎でという諺もございます。
だから絶対に笑ってやるもんか、と、無情にも私は彼女を
カチ無視すると、サッサとポケットの中から単行本を取り出し、
知らーん顔して読み始めたのでした。

しかし・・・・それからしばらくして、やっぱりあの時、
クスッとでも笑ってやるべきだった、と、
激しく後悔する出来事が起こりました。
それは、読んでいたその単行本が,
異様におもしろかったからでございます・・
その単行本は、私が愛する太宰治の「女学生」という小説だったのですが、
その作品は過去に,30回以上は読んでいるというのに、
いつも同じ箇所で噴き出してしまうという
地雷型小説(私的に)でございまして、
なんと運悪くも丁度その時、その地雷を踏んでしまったのであります。

とたんに「ぷぷぷっ」と笑いが込み上げて来ました。
慌てて本を閉じ、目を綴じます。目を閉じたまま、笑うな・・・
笑うなよ・・・こんなのちっともおもしろくないぞ・・・
ぜんぜんおもしろくなんかないんだぞ・・・
もしここでいきなり笑ってみろ、後のギャル達が黙っちゃいないぞ・・・
おまえはもう二度と人間として,生きて行けないほどの
恥をかくことになるんだぞ・・・落ちつけ・・・落ち着くんだ・・・と、
自分に暗示を掛けます。そして極めつけに
死んだお婆ちゃんの顔なんかを,思い出したりしては、
鼻でゆっくりと深呼吸をしておりますと、
どうにかなんとか、ぷぷぷの神様はお出ましにならずに済んだようで、
安心した私は、ゆっくりと深呼吸をしながら、
再び目を開いたのでした。その瞬間です、

なんとその貧乏臭い美容師がいきなり
「太宰のどこがそんなに可笑しいんですか?」と、
真剣な顔をして聞いて来るではございませんか。
復讐です。きっと、あの時私が笑わなかった事への
復讐が始まったのです。すかさず私は再び目を閉じ、
聞こえなかったフリをします。今ここで彼女に、
太宰文学にスパイスされた「お笑い」を説明したとしても、
きっと彼女は意味がわからず、再びその幸の薄い表情で
「それのどこが可笑しいんですか?」と
議論を求めて来るに違いないのです。

私はそのまま知らん顔して,寝たふりを決め込みました。
すると彼女はそれ以上私を追及する事なく、
再びセッセとハサミを動かし始めました。とりあえずセーフです。
そうだこのまま寝たふりをして シカトを決め込もう、
そしてカットが終わったら,とっとと素早く早急にこの店を飛び出し、
もう二度とこの若者の街に踏込むのをヤメよう、私は親父だ、
こんな街にノコノコとやってきたのが そもそものマチガイなのだ、
もうよそう、もう二度とあの22才の馬鹿女に
「ちょいワル親父」などと乗せられて調子に乗るのはよそう、
なんならこのマゲを切り落してやってもイイ、
潔くマゲを切って、カッパのような落ち武者カットとなり、
私は恥ずかしい人間なのですと,人々に見て貰いながら、
いつもの新宿に帰ろう・・・そう自分を戒めながら、
私はまるで悟りを開いた僧侶のように清々しい気持ちで
ゆっくりと目を開きました。

すると、すでにそこには,幸の薄い美容師の姿は見当たりません。
幸の薄い美容師は、私の2つ隣りの席のオバさんの髪を
セッセと切っているではありませんか。
カットの途中で1人ポツネンと取り残された私。
鏡に映る自分の姿。てるてる坊主のような真っ白な前掛けを
頭からかぶり、ボサボサの髪をだらしなくさせたまま
放置されている親父・・・。その姿はまさしくカッパ。
そう、私はこのカッパのような姿のまま、
このオシャレなカリスマ美容院でポツンと取り残されては、
生き恥を晒していたのでございました・・・

とたんに「ふふふふふ」という笑いが込み上げて来ました。
今ここで、突然大きな声で「我が輩はカッパである!」と叫んだら、
いったい何人のギャル達が笑ってくれるだろうか。
きっとゲラゲラと笑い出すのは,やっぱりアイツだけだろうな・・・と、
私は、幸の薄そうな美容師をソッと見ては、
また「ふふふふふ」と不気味に笑ったのでございました。
分相応。つくづくこの言葉が心にしみた、
辛い一日でございました

…終わり

(注)私の体験談ではありません
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迅速に対応させていただきます。 
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